疫学
抗体は、ニコチン性アセチルコリン受容体(AChR)が85%、筋特異的受容体型チロシンキナーゼ(MuSK)が5-10%
胸腺腫関連MG(全体の約20%、抗ACHR抗体陽性)の発症年齢は 50歳をピークとする正規分布
非胸腺腫抗ACHR抗体陽性例の発症年齢は二峰性、世界的に後期発症(50歳以降)のMGが増加している
早期発症MGでは30歳前後がピーク
日本、東アジアでは、5歳未満にもピークがある
2018年日本における有病率 10万人に23.1人
症状
易疲労性という運動症状がメイン
眼瞼の易疲労性試験 上方視を1分 特異度高い
アイスパック試験 アイスパックを2分眼瞼にあてる 特異度高い
反復刺激でwaning陽性
エドロフォニウム試験陽性
単線維筋電図(限られた施設のみで実施可能)
8~15%に甲状腺疾患を含む自己免疫疾患の合併
非運動症状として、赤芽球癆、円形脱毛、低γグロブリン血症、心筋炎、味覚障害
抗骨格筋抗体陽性は、胸腺腫存在の可能性を検討(検査の保険適応なし)
抗MUSK抗体陽性例
IgG4が主体で、補体介在性運動終板破壊がほとんどない
クリーゼになりやすい
顔面筋の罹患が少ない(3%)
顔面、口、咽頭筋の筋萎縮
重症度スコアー
MG-ADLスケール
QMGスコア
治療の概要
胸腺摘出術の適応
AchR抗体陽性MGの80%に胸腺過形成または胸腺腫あり
胸腺腫は低悪性度、しばしば周辺組織に浸潤、まれに転移
胸腺腫:切除を検討
胸腺過形成:早期発症(50歳未満発症)、病初期、抗ACHR抗体陽性、の場合は切除を検討
免疫療法
経口(1日平均 5mg以下を目指す)
点滴ステロイド療法
血液浄化療法
Γグロブリン大量療法
免疫抑制剤(シクロスポリン、タクロリムス)
難治性に対しては生物学的製剤を検討
対症療法
抗コリンエステラーゼ薬(メスチノン®、マイテラーゼ®)
眼筋型MGに対する有効性 20-50%
複視には効果限定的
ナファゾリン点眼
眼瞼下垂に有効
α2アドレナリン受容体刺激作用によりMüller筋の収縮を増強 → 眼瞼下垂を改善
生物学的製剤による治療
ウィフガート® エフガルチギモド
FcRn阻害薬
IgGリサイクリングを阻害して病原性自己抗体量を減少
IgM、IgAなどの測定値には影響しない(血漿交換よりも免疫に対する影響が少ない)
保険適応は治療抵抗性の全身型MG(抗AchR抗体陽性に限らず)
投与方法
DIV(10 mg/kgを125mLにして1hで投与)を1W毎に4回が1サイクル
サイクル間の平均期間は 10.3W
抗体の種類によらず有効
特記事項
B型肝炎の再活性化に注意
妊娠:有益性が危険性上回るときのみ。IgG抗体は胎盤通過性がある。
乳汁への移行は不明
ヒフデゥラ® エフガルチギモドリスティーゴ® ロザノリキシズマブ
抗FcRnモノクローナル抗体
皮下注
保険適応は治療抵抗性の全身型MG(抗AchR抗体陽性に限らず)
ソリリス® エクリズマブ
抗補体(C5)モノクローナル抗体
抗AChR抗体による補体介在性の障害を阻害
保険適応は抗AchR抗体陽性の治療抵抗性全身型MG
投与方法
18歳以上
1回900mg を週1回で計4回、その後 1回1200mgを2Wに1回投与
特記事項
髄膜炎菌等の莢膜形成菌への感染リスクが増加
ワクチン メナクトラ®
投与開始2W前までに接種
免疫抑制状態のPtには 8W以上間隔をあけて2回接種
妊娠:有益性が危険性上回るときのみ。
ユルトミリス® ラブリズマブ
抗補体(C5)モノクローナル抗体
補体蛋白質C5に結合してC5aおよびC5bへの開裂を阻害して、C5b-9の産生を抑制
保険適応は抗AchR抗体陽性の治療抵抗性全身型MG
投与方法
患者の体重を考慮し、1回2,400~3,000mgを開始用量
初回投与2週後に1回3,000~3,600mg
以降8週ごとに1回3,000~3,600mgを点滴静注
ソリリス®よりも点滴回数が少なくなる
特記事項
エクリズマブと同様
2022年8月に保険適応。当面、全例調査
予後
死亡率はこの50年で著しく低下
完全寛解、薬理学的寛解率は、合わせて15%で長期的に変化なし
多くは、生涯継続
約半数は生活に支障を生じるレベル