多発性硬化症
日本には約15000人、10~50歳で発症がほとんど
男女比=1:3
抗AQP4抗体陰性、抗MOG抗体陰性
急性期治療
ステロイドパルス療法
mPSL 0.5~1g を 3~5日 を1~3クール
血漿浄化療法
単純血漿交換療法(RCTで有効性有)、二重膜濾過法、血漿吸着療法
血漿中の病状に関係している抗体を除去
透析と同じように血液を血管から抜いて、分離 ⇒ 血漿を交換 ⇒ 体内に
慢性進行性MSには実施しない
慢性期の再発抑制治療
インターフェロンβ
発熱、注射部位反応、うつ状態の副作用
ベタフェロン® 2日に1回の皮下注射
アボネックス® 週に1回の筋肉注射
グラチラマ―酢酸塩(コパキソン®)
1日1回の皮下注射 副作用少ない
フマル酸ジメチル(テクフィデラ®)
1日2回の内服薬
サイトカインの発現調整による抗炎症作用
副作用:腹部膨満
フィンゴリモド(イムセラ®、ジレニア®)
冬虫夏草の成分から合成
1日1回の内服
リンパ節・脾臓のリンパ球が血液中に出ていくのを抑制
導入初期の頻拍数低下(導入は入院で実施)、黄斑浮腫の副作用
シポニモドフマル酸塩(メーゼント®)
1日1回の内服
二次性進行性に有効
治療開始前にCYP2C9遺伝子型を確認する検査が必須
オファツムマブ(ケシンプタ®)
月1回皮下投与(初回、1、2,4週後、以降は4週間毎)
抗CD20モノクローナル抗体
導入前の確認事項:B型肝炎(HBs抗原、HBs抗体、HBc抗体)、真菌・結核の否定(βDグルカン、IGRA)、リンパ球数、IgG・IgM値の確認、55歳以上は慎重導入、初回はmPSL併用(40-125mg)
ナタリズマブ(タイサブリ®)
4週に1回点滴
リンパ球表面のインテグリンをブロックし、リンパ球が内皮細胞に結合することを阻止して、中枢神経に入ることをブロック
ヘルペス感染症、PML(進行性多巣性白質脳症)のリスク
脱髄の結果 ⇒ 軸索への栄養不足、イオンチャンネルの配置変化、膜活動電位の不安定化で、軸索が進行性に変性する ⇒ 進行性MSになる
進行MSの機序:グルタミン酸を介した興奮毒性、酸化ストレスによる障害、鉄の蓄積、フリーラジカル、DNA欠失の蓄積によるミトコンドリア異常
疲労感:MS患者の90%が訴える。増強する因子として、体温上昇、抑うつ、頑張り過ぎ、夜間排尿のための睡眠不足
視神経脊椎炎(抗AQP4抗体陽性)
アストロサイトの足突起にあるAQP4チャネルに対する抗AQP4抗体が陽性
日本に約4000人
男女比=1:9
急性期治療
ステロイドパルス療法
抗体産生に関与するリンパ球を減らす、抗炎症作用
mPSL 0.5~1g を 3~5日 を1~2クール
血漿浄化療法(plasmapheresis, PP)
週2~3回、7回/月まで
単純血漿交換療法(RCTで有効性有)、二重膜濾過法、血漿吸着療法
血漿中の病状に関係している抗AQP4抗体を除去
透析と同じように血液を血管から抜いて、分離 ⇒ 血漿を交換 ⇒ 体内に
大量γグロブリン療法(献血ベニロン®)
2019年12月に「視神経炎のみ」に保険収載
正常人からの免疫グロブリンを投与して、病気の勢いを低下させる
慢性期の再発抑制治療
サトラリズマブ(エンスプリング®)
IL-6受容体に対するモノクローナル抗体
皮下注射 月1回皮下投与(初回、2、4週後、以降は4週間毎)
敗血症、肺炎などの重篤な感染症のリスク
イネビリズマブ(ユプリズナ®)
半年に1回の点滴(0, 2週後は半年毎)
抗CD19モノクローナル抗体 ⇒ Bリンパ球の形質芽細胞への分化を抑制
エクリズマブ(ソリリス®)
補体C5に対するモノクローナル抗体
単剤で十分な効果(日本人の3%に無効となる遺伝子変異あり)
髄膜炎菌感染のリスク、予防接種が必要
ラブリズマブ(ユルトミリス®)
補体C5に対するモノクローナル抗体
初回、2回目は初回から2週間後、以降8週ごとに点滴
リツキシマブ(リツキサン®)
抗CD20モノクローナル抗体
開始時は1週間ごとに4回、以降は6カ月ごとに2週間隔で2回の頻度で点滴
副腎皮質ステロイド内服 5-15mg/day
免疫抑制薬(アザチオプリン、タクロリムス)
難治性NMOの再発予防に定期的PPが選択可能
抗MOG抗体関連疾患
上記2つの中枢神経脱髄疾患よりも病態・治療方法の解明は遅れている
髄鞘の表面に存在するMOG(Myelin oligodendrocyte glycoprotein)に対する抗体が関連
半数が再発なし
小児急性散在性脳脊髄炎(ADEM)、多相性ADEMでの陽性率が高い
日本に約2000人、男女比=1:1
急性期治療
ステロイドパルス療法
mPSL 0.5~1g を 3~5日 を1~3クール
治療反応が良い
血漿浄化療法(plasmapheresis, PP)
血漿中の病状に関係している抗MOG抗体を除去
慢性期の再発抑制治療
確立した予防薬はなし
内服PSL
10mg/day(まず半年)が再発を抑制(エキスパートオピニオン)
免疫グロブリン、リツキシマブの抑制効果が期待・・・
アザチオプリン(イムラン®)を検討する場合も
参考文献
Akaishi T et al. Relapse activity in the chronic phase of anti-oligodendrocyte glycoprotein antibody-associated disease. J Neurol 2021
日本神経学会「多発性硬化症・視神経脊髄炎診療ガイドライン2017」