世界では、10億人は年に1回以上急性下痢症。毎年10万人の中で、1万人が受診、250人が入院、5人が死亡(アメリカ)。
下痢の定義
1日3回以上の軟~水様の便
2週間以内 急性
2~4週間 持続性
4週間以上 慢性
急性下痢の90%が感染性(10%薬物、中毒、虚血、暴飲暴食、異物摂取など)
腸管における水分吸収
通常では、1日に9Lの液体が腸管内に流れる
8Lは小腸で吸収され、1Lが結腸に
便中の水分は 0.2L(結腸で0.8L吸収、最大 3.2L吸収可能)
炎症の生じているメインの部分
小腸なのか、大腸なのかで出現する症状が下記のように異なる
メインの病変 | 小腸 | 大腸 |
性状 | 不消化便(朝固め、昼緩め) | 粘液性、血性 |
1回の排便量 | 多い | 少ない |
排便回数 | 多くない | 多い |
疼痛 | 上~中~右下腹部 | 左~下腹部痛、排便時痛 |
しぶり | 無 | 有 |
悪心、嘔吐 | 無~有 | 無 |
栄養障害 | 多い | 少ない |
小腸に炎症があると、吸収されなかった水分が大腸と胃に流れる。大腸に流れた分は大腸で水分がある程度吸収され、長時間残留した部分が通常の固さになり、残留していない部分は下痢になる。胃に逆流した水分は嘔吐されることがある。
大腸に炎症があると、吸収されなかった水分は水様性下痢になり、一部は小腸に逆流し、小腸で水分が吸収される。嘔吐することはあまりない。
しぶり腹:便意はあるのに便がほとんどでない状態(直腸が炎症などにより刺激されている状態)
原因
多くはウイルス性
小腸型: ノロウイルス、ロタウイルス
大腸型:サイトメガロウイルス、アデノウイルス、単純ヘルペスウイルス
一部は細菌性
小腸型:黄色ブドウ球菌、コレラ菌、腸管毒素原性大腸菌、ウェルシュ菌、原虫
大腸型:サルモネラ菌、赤痢菌、腸管侵襲性大腸菌、Clostridium difficile(偽膜性腸炎)、赤痢アメーバ
病原微生物の潜伏期と主な原因食品
病原微生物 | 潜伏期 | 主な原因食品 |
ノロウイルス | 24-48時間 | 二枚貝(カキ、ハマグリ) |
黄色ブドウ球菌 | 1-6時間 | 手作業の加工食品(おにぎりなど) |
ウェルシュ菌 | 6-18時間 | 食肉加熱調理品(大量調理食品で増殖)、カレー、シチューなどの給食 |
毒素原性大腸菌 | 1-3日 | 便で汚染された食品・水 |
カンピロバクター | 2-5日 | 鶏肉、未殺菌牛乳 |
サルモネラ | 1-3日 | 卵、鶏肉、未殺菌牛乳、生鮮食品 |
腸炎ビブリオ | 2-48時間 | 生食の魚介類 |
治療
軽症のリスクのない患者は、細菌性であっても水分と電解質の補液のみ。
中等症もしくはリスクのある患者(免疫不全、心臓人工弁、高齢者)の場合は、便培養、抗菌薬投与を考慮する。
抗菌薬
サルモネラ:セフトリアキソン 2 g 24時間毎、シプロフロキサシン 500mg 1日2回を 3-5日間
Campylobacter jejuni:アジスロマイシン 500mg 1日1回を3日間