糖尿病性ケトアシドーシス と 高浸透圧高血糖状態

代謝
脱水の補正、血糖、カリウムの値に注意

糖尿病ケトアシドーシス・・・高血糖、代謝性アシドーシス、高ケトン血症
高浸透圧高血糖状態・・・著明な高血糖、高浸透圧血症、脱水
2者は完全に独立した病態ではなく、連続した病態

糖尿病性ケトアシドーシスdiabetic ketoacidosis (DKA)

インスリンが極端に不足した状態
インスリン拮抗ホルモン(グルカゴン、カテコラミンなど)が増加
脂肪分解亢進 ⇒ 酸性のケトン体が大量に産生 ⇒ ケトアシドーシス

高浸透圧高血糖状態hyperosmolar hyperglycemic syndrome (HHS)

著しい脱水と高血糖による高浸透圧が病態の中心
インスリン欠乏はDKAほど著しくはない
高血糖は600mg/dL以上と著しい

特徴

 DKAHHS
患者の特性主に1型糖尿病
時に2型糖尿病(DKAの約20%)
若年者が多い
原則的に2型糖尿病  

高齢者が多い
症状脱水症状
消化器症状(悪心、嘔吐)
アセトン臭(ケトン臭)
Kussmaul呼吸
脱水症状  


検査所見尿ケトン体 陽性~強陽性
PH(動脈血)< 7.3
血糖値 240~800 mg/dL
浸透圧 正常~300 mOsm/L
クレアチニン 軽度上昇
Anion gap* 増加
陰性~弱陰性
≧7.3
600~1500 mg/dL
≧320 mOsm/L
中等度上昇
正常~軽度増加
Anion gap = [Na+] – ([Cl+] + [HCO3])(正常範囲 8 – 16 mEq/L)

治療

脱水補正 

総脱水量は体重の10%程度(体重 50kgで5L)
輸液量は最初の1-3時間で生理食塩水 2-3L、治療開始後24時間で総脱水量を補正

血清Naが150 mEq/L以上となった際は、0.45%食塩水を使用

HHSの脱水はDKAよりも重症のことが多い
BUT 高齢者が多いため、肺水腫、心不全に注意

[0.45%食塩水(ハーフサリン)]
生理食塩水 500mL + 蒸留水 500mL(Na+ 77 mEq/L, K+ 0 mEq/L; ブドウ糖 0%)
蒸留水 500mL + 10%食塩水 24mL(Na+ 78 mEq/L, K+ 0 mEq/L; ブドウ糖 0%)

血糖補正

速効型インスリン投与(ヒューマリンR®)を使用

ボーラス静注(0.1 U/kg) & 0.1 U/kg/hで持続静注
(2-3h後)血糖降下が10%以下の際は、倍に増量

血糖目標値
DKA 150-200 mg/dL
HHS 250-300 mg/dL

血糖値が、目標値 + 50 mg/dLに達したら
5%ブドウ糖液と生理食塩水(1:1で0.45%食塩水)を100-200mL/hで投与
0.1 U/kg皮下注2h毎に減量

[ブドウ糖入りハーフサリン]
生理食塩水 500mL + 5%ブドウ糖液 500mL(Na+ 77 mEq/L, K+ 0 mEq/L; ブドウ糖 2.5%)
ソリタT1® 500mL(Na+ 90 mEq/L, K+ 0 mEq/L; ブドウ糖 2.6%)

K補充

体内総Kは不足していることを念頭に(2-3h毎に確認)

K >5.0 mEq/L
K補充は不要

K: 3.3-5.0 mEq/L
(尿量OK + 心電図変化なしを確認後)
輸液1Lに KCl®を 20-40 mEqを追加

K <3.3 mEq/L
インスリン投与中止 & K+を10-20 mEq/hで補充

PHの補正

PH 6.9以下
メイロン® 8.4% 50 mL + 滅菌水 200 mL + KCl® 10 mEq を2h以上
(検討レベル)

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