概要
有病率
先進国では 2%、65歳以上では6-10%
予後
診断後(下記のStage C) 30-40% 1年以内に死亡 60-70% 5年以内に死亡
慢性期の管理
Stage A
器質的心疾患なし
リスク因子への介入(喫煙、肥満、糖尿病、高血圧、脂質異常症)
ACE/ARB阻害薬、スタチン(必要時)
Stage B
器質的心疾患あり
リスク因子への介入
虚血性心疾患への特異的治療、原疾患の治療
ACE/ARB阻害薬、β遮断薬導入(一部)、スタチン(必要時)
Stage C
器質的心疾患あり、心不全症状あり
HFpEF(HF preserved EF、EF ≥ 50%)
HFmrEF(HF mid-range EF、EF 40-50%)
生命予後を改善する基本治療薬はなし
ARNIは一部には有効
入院を減少させる薬剤として、ARB、MRA、β遮断薬
HFrEF(HF reduced EF、EF < 40%)
基本治療薬:ARNI、ACE/ARB阻害薬、β遮断薬導入、SGLT2阻害薬(2型DMの場合)
併用薬:利尿薬、イバブラジン、ジギタリス、血管拡張薬
非薬物治療:ICD留置、経皮的僧帽弁接合不全修復術(MitraClip)、補助人工心臓、心臓移植、心室再同期療法(CRT, cardiac resynchronization therapy)
Stage D
難治性心不全、安静時でも心不全症状あり
Stage Cで使用した治療方針の見直し
緩和ケア
薬剤
MRA(セララ®)、ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬、アルダクトンA。アルドステロン(Na、水の再吸収、K排泄)の抑制。
ARNI(エンレスト®)、アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬
サクビトリルとバルサンタンの複合体。
アンジオテンシンIIは、血管収縮作用やアルドステロン(副腎皮質ホルモンのひとつ)の分泌促進作用。これを抑制する。
ナトリウム利尿ペプチド(NP)は、利尿・Na利尿作用、血管拡張作用、レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系を抑制、臓器線維化を抑制。ネプリライシンはNPを分解する体内物質で、これを阻害することによりNPの効果を亢進させる。
イバブラジン(コララン®)、洞結節にある過分極活性化環状ヌクレオチド依存性(HCN)チャネルを阻害、心拍数を減少(β遮断薬に抵抗性の場合に限定、HR >75回/min)
SGLT2阻害薬(Sodium-glucose co-transporter阻害薬、フォシーガ®)、近位尿細管におけるグルコースとNaの再吸収抑制
ループ利尿薬(ラシックス®)、遠位尿細管で再吸収抑制、低Kに注意
RAAS(renin-angiotensin-aldosterone system)遮断薬、ACE阻害薬、ARB阻害薬、抗アルドステロン薬、直接的レニン阻害薬
トルバプタン(サムスカ®)、バソプレシンV2-受容体拮抗作用、腎集合管でのバソプレシンによる水再吸収を阻害、低Na血症を是正する効果もある